経過措置すべてが問題点と言いたいぐらいですが、まず次の一点を御理解ください。
麻疹や風疹の予防接種をすでに接種した者および罹患した(かかった)者についてはMRワクチンの接種を一切認めない。
どうも情報筋から聞くと、この点についての臨床試験がまだ済んでいない、もしくはしていないそうで、安全性を確認していないので接種は絶対に認めないそうです。そういう前提で通達を読み直すと半分ぐらい経過措置が理解できます。半分ぐらい理解できてもやはり納得しにくいのは確かです。どんな制度でも改変する時に生じる不都合を出来るだけ緩和するのが当然だからです。制度によっては緩和がしにくいものもありますが、今回は誰が考えても次の項目が挙げられます。
この点についての回答は何もありません。すべてはある日突然の一片の通達事項で決定を宣言され、私のような最前線の小児科医には声ひとつ上げる事が出来ません。さらに言えば、この複雑な経過措置の相談は「かかりつけの医療機関で」と朗らかに書かれていますので、今もウンウン言いながらHPを書いています。
ボヤいてもしかたがありませんので、出来る範囲で対処可能な問題点は、2006年の4月1日でまだ2歳になっておらず、新制度下でMRワクチンが接種できる可能性のある子供たちに、どの時点から「もう少し予防接種を遅らせましょう」と勧めるかです。実はこれも通達に明記されていまして、「3月1日の誕生日以降のものに勧める」です。理由は3月から接種を始めると麻疹、風疹の予防接種の間隔が4週間であるためどちらかが有効期限切れで接種できなくなる可能性が生じるからだそうです。
しかし現行制度と新制度では予防接種の有効性にかなりの違いがあり、予防と言う点に立てば、出来うる限り新制度でMRワクチンを接種した方が良いのは明白です。しかし一方で遅らせる期間が長いと麻疹に罹患する可能性は増大するためその兼ね合いでどうするかが非常に判断の難しい問題になります。