ヘルパンギーナ

流行時期

春から夏(4〜9月)に多く、他の季節にも散発的見られるとなっていますが、やはり暑い季節の病気で冬に見た経験はほとんどありません。

好発年齢

0から4歳の乳幼児に多く、成人でなる事はまずないとされています。

原因ウイルス

コクサッキーウイルスA群(1〜10,16,22)、コクサッキーウイルスB群(1〜5)、エコーウイルス(6,9,11,16,17,22,25)
*意外と思われるかもしれませんが、手足口病とは親戚というより兄弟に近い関係の病気で、原因ウイルスも一部重複するものがあります。この病気も病原ウイルスが単一のものではなく複数であるため、毎年のようにかかったり、ワンシーズンに2回感染することもありえます。

体の中のウイルスの動き

感染経路は口からのウイルス侵入です。体の中に入ったウイルスはまず喉と腸の中で繁殖し、それから血液の中に入り込んで増殖し症状が出て感染が終了します。ただしウイルスは侵入してから喉から1〜2週間、便の中から3〜5週間排出され続けるとなっています。この動き方も基本的には手足口病と同じです。

症状

潜伏期は2〜7日。突然の発熱からのど痛い、頭痛、筋肉痛などがおこる。まれに無熱性のこともありますが、通常は1〜4日の高熱が続きます。
特徴的な症状は口蓋弓部(のどちんこの上辺り)に小水疱が現れ、これが2〜3日で5mm程度の潰瘍となり強い痛みが出現します。水疱、潰瘍は4〜5日で自然治癒します。

治療

これといった有効な治療薬は無く、実際の治療でも出現する主要な症状に対し、熱には解熱剤、水分が十分取れず脱水状態になりかけている子供には点滴などの対症療法が基本になります。
季節と症状から比較的診断が付けやすい病気ですが、細菌性の病気で似た症状のものとの正確な見分けは診察だけでは困難で、症状の重さを考え抗生剤投与は当院では基本的に行っています。

重大な合併症

ごく稀ですが脳炎がおこるとされていますが、私は幸い経験(聞いたことはあります)したことがありません。予防する有効な方法は残念ながらありませんので、症状がおかしいと思ったら早めにご相談ください。

小学校や幼稚園や保育所の出席停止基準は

公式には学校伝染病第3類に属し、出席停止の基準の2のただし書きによるとなっています。ではどんなただし書きかと言うと、
「治癒するまで、ただし、学校医その他の医師において適当と認められる予防処置をした時、または病状により伝染のおそれが無いと認めたときは可。」
となっています。この基準に則り従来は発熱や口の中の特有の潰瘍がが消失する時を目安に出席を停止していました。ところがこの病気でのウイルス排泄は症状が終息してからも1ヶ月から2ヶ月にわたって続くことが分かり、厳密に出席停止基準を運用すると最大2ヶ月も出席できないことになります。
そのため小児科学会から出席停止の基準に関する見解(日本小児感染症学会運営委員会:日児誌97:1875,1993)が出され要約すると、
「ウイルスが咽頭(のど)から1〜2週間、便から3〜5週間排泄されることから、他の子供への感染の可能性だけを理由に登校(園)を停止する積極的な意味は無い」
まるでどこかの政府答弁みたいな見解で、「あとはよろしく」みたいなものですが、この見解を基に当院ではしごく常識的に熱が下がり、食欲が戻り元気なれば「治った」として出席停止基準を運用しています。