手足口病

流行時期

もともとは春から秋(4〜9月)に多いとなっていましたが、その他の季節にも散発的に発生し、秋から冬に大流行したこともあります。

好発年齢

0〜4歳の乳幼児に多いですが、成人でもかかる可能性があるとされます。(あまり見たことはありませんが)

病原ウイルス

コクサッキーウイルスA16、エンテロウイルス71が主原因で、その他にもコクサッキーウイルスA群(5,7,8,10)、コクサッキーウイルスB群(2,3)、エコーウイルス11も原因となることがある。
*水ぼうそうやおたふく風邪のようにひとつの原因ウイルスで手足口病になるわけではなく、複数の原因ウイルスがあるため年に何回もかかったり、去年かかっても翌年かかるということが起こります。ただしほとんどの場合、ワンシーズンに流行する病原ウイルスの種類はひとつであることが多いようです。

体の中でのウイルスの動き

感染経路は口からのウイルス侵入です。体の中に入ったウイルスはまず喉と腸の中で繁殖し、それから血液の中に入り込んで増殖し症状が出て感染が終了します。ただしウイルスは侵入してから喉から1〜2週間、便の中から3〜5週間排出され続けるとなっています。

症状

潜伏期は3〜6日で、1/3程度に38℃の発熱を1〜2日間おこります。特徴とされる発疹は手のひら、足の裏によくでき、乳児では足からお尻にかけてできることも多いです。典型的な発疹は中心に水疱をもち、水疱の周囲が赤い発疹で、大きさは米粒程度で痛みは無い(時々「痛い」と言う子供はいますが・・・)とされています。発疹自体は数日中にあめ色になって自然に消えていきます。
問題になるのは口内炎で、口の中のどこにできてもかまいませんが、2〜3mm程度のアフタ性口内炎となり、これがとっても痛くてご飯を食べてくれないのが一番困ります。

治療

これといった有効な治療薬は無く、実際の治療でも「嵐が過ぎ去るのを待つ」のが基本となります。当院でも熱のある子供には念のため内服薬を処方していますが、熱も無い子供には薬はとくにお出ししていません。少数派ですが飲んだり、食べたりできなくなって点滴をしなければならない子供もいます。

重大な合併症

ごく稀ですが脳炎がおこるとされていますが、私は幸い経験(聞いたことはあります)したことがありません。予防する有効な方法は残念ながらありませんので、症状がおかしいと思ったら早めにご相談ください。

小学校や幼稚園や保育所の出席停止基準は

公式には学校伝染病第3類に属し、出席停止の基準の2のただし書きによるとなっています。ではどんなただし書きかと言うと、
「治癒するまで、ただし、学校医その他の医師において適当と認められる予防処置をした時、または病状により伝染のおそれが無いと認めたときは可。」
となっています。この基準に則り従来は発熱や手足の発疹、口内炎が消失する時を目安に出席を停止していました。ところがこの病気でのウイルス排泄は症状が終息してからも1ヶ月から2ヶ月にわたって続くことが分かり、厳密に出席停止基準を運用すると最大2ヶ月も出席できないことになります。
そのため小児科学会から出席停止の基準に関する見解(日本小児感染症学会運営委員会:日児誌97:1875,1993)が出され要約すると、
「不顕性感染(症状の出ない感染)も多く、ウイルスが咽頭(のど)から1〜2週間、便から3〜5週間排泄されることから手足口病の発疹が出ている子供でも、他の子供への感染の可能性だけを理由に登校(園)を停止する積極的な意味は無い」
まるでどこかの政府答弁みたいな見解で、「あとはよろしく」みたいなものですが、この見解を基に当院では出席停止基準を次のように運用しています。
1.発熱している患者は出席停止
手足口病でなくとも熱があれば休まなければしかたがない。
2.食事が十分取れなければ出席停止
口内炎を痛がる子供は水を飲むのも嫌がるようになるので、食事がある程度普通に食べれるようなるまではお休み。
3.手足の発疹が派手な子供は出席停止
理論上は休ませても感染予防には効果はありませんが、発疹というものは人間は本能的に嫌がるところがあり、また「○○ちゃんからうつされた」と後で陰口を叩かれないようにそこそこ目立たなくなるまでは出席停止。