2003-2004シーズンのワクチンは効果が無い?
情報社会の恐ろしさで、小児科医より早くこの情報を知っているお母様方がおられたのには驚きました。情報の原文を示すのが一番正確なんですが、これはお役所らしく、小難しい専門用語が散りばめられ、回りくどくて読みにくいもので、「だからどうなんだ?」になかなかたどり着きにくい代物です。しかたがないので自信はありませんが、なんとか解説してみます
今年のワクチンに使われたのは、、
A型株
A/ニューカレドニア株/20/99(H1N1)
A/パナマ株/2007/99(H3N2)
B型株
B/山東株/7/97
ニューカレドニア株と書いてあるのがソ連型インフルエンザであり、パナマ株となっているのが香港型インフルエンザです。素直な疑問はソ連型なのになんでニューカレドニアなんだというところでしょうが、インフルエンザというやつは短期間で小さな変異を繰り返す特性をもっており、ソ連型が全世界に蔓延していくうちに各地で亜種が誕生し、それがまた蔓延するためです。
自動車に例えると日本モデルや北米モデル、欧州モデルが地域にあわせて作られている事と比較すると分かりやすいかもしれませんし、カップ麺が関西と関東で味付けが違ったり、アメリカ向けではまた味が違ったりするのと似ていると思えば良いかもしれません。
インフルエンザでやっかいなのは同じ香港型やソ連型でも亜種の性格の違いが大きすぎるとワクチンが十分には効かない事があります。そのため毎年シーズン前に慎重に調査研究をしてワクチンの内容を決定するのですが、今年は結果的にかなりのハズレであったようです。
当方の手許に届いている神戸の速報では
A香港型は16.1%が「ワクチン株とやや抗原性が異なる株」、B型は「ワクチン株とは抗原性の異なる株」である。
この速報でもわかりにくいかもしれませんが、要するにA香港型は1割〜2割はワクチンが効かない、そしてB型はワクチンが効かないと解読してください。
じゃまったくワクチンは無意味であったかどうかです。インフルエンザの免疫(抵抗力)は原則として1年で消えるとなっていますが、成人でこれまで何回もインフルエンザになった人は検査では検出できないところで免疫が残っており、ワクチンという火種を入れることでワクチンで狙った免疫力以外の免疫も引き出すことができるとされています。ただし子供では年少になるほどそんな蓄えは無いのでワクチンの効果はでにくく、2003-2004シーズンは大流行する可能性が高いと考えられます。
流行の予測精度は近年非常に上がっており、これほどのハズレは珍しいともいえます。あんまり関係ないかもしれませんが、アメリカでも今年は予測が大ハズレであったようで記録的なインフルエンザの流行が起こったそうです。